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ねこまんま冤罪事件簿:第2話

アルフレッド・アーサー・ブルネル=ヌヴィル作『母猫と3匹の子猫』。19世紀フランスの画家による、パブリックドメインの猫の絵画です。 歴史・文化
出典:アルフレッド・アーサー・ブルネル=ヌヴィル『母猫と3匹の子猫』(パブリックドメイン)
歴史・文化
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『黄金時代の記憶 ―― 貴族が愛した高貴なる水飯』

1. タイムトラベル:1000年前の「朝食(10時)」へ

時は平安。 場所は、寝殿造の御殿。
時刻は、朝の十時――当時の「朝餉(あさげ)」の時間である。

そこに並ぶのは、炊きたてのふっくらご飯……ではない。
貴族たちが口にしていたのは、「強飯(こわいい)」と呼ばれる、蒸し上げた硬い米。 今で言えば、お赤飯やおこわに近い、弾力の塊だ。

「強飯は、冷めると石のように硬くなる。これをそのまま食べるのは、優雅な貴族の顎にはあまりに過酷だった」
刀剣ワールド「強飯と姫飯の違い」

2. 「物理的制約」という名の正義

この“硬すぎる主食”を前に、貴族たちはどうしたか?
答えは、かけること。水を。あるいは、お湯を

こうして生まれたのが、「水飯(すいはん)」「湯漬け(ゆづけ)」である。
冷えた強飯に水を注ぎ、さらさらと流し込む。 それは、優雅さと実用性を兼ね備えた、当時の“高貴なる知恵”だった。

「三条の中納言」こと藤原頼通が、肥満解消のために医師の勧めで夏場に水飯を好んで食べたというエピソードが実在します。
今昔物語集・巻二十八第一話

この逸話は、ねこまんまの祖先が“健康食”としても認識されていたことを示している。
つまり、汁かけ飯は、かつて“貴族の食卓”に堂々と並ぶ、正統な料理だったのだ。

3. 技術革新が「悪」を生んだ

だが、時代は変わる。
鎌倉時代以降、「炊き干し法」が普及し、米は水で炊かれるようになる。 これにより、「姫飯(ひめいい)」――冷めても柔らかいご飯が登場する。

「姫飯は、炊きたてでも冷めても柔らかく、噛みやすい。強飯の時代は終わりを告げた」 ▶原始人の見聞「姫飯(ひめいい)」の始まり」

この技術革新が、ねこまんまにとっての“転落”の始まりだった。
もはや、汁をかけなくても食べられる。
すると、「汁をかける」という行為は、「知恵」ではなく「怠慢」とみなされるようになる。

  • 「噛まない=行儀が悪い」
  • 「混ぜる=料理人への冒涜」
  • 「汁かけ=手抜き」

こうして、かつての“高貴な技術”は、時代の進化によって“悪習”へと変貌していった。

4. 第2回の結び:没落したエリート

ねこまんまの祖先――水飯・湯漬けは、かつて貴族の食卓を彩ったエリートだった。 だが、炊飯技術の進化という名の皮肉が、彼を“行儀の悪い飯”へと突き落とした。

「かけなくても食べられるようになった瞬間、汁かけ飯は“知恵”から“怠慢”へと格下げされた」

だが、彼を待っていたのは、「怠慢」というレッテルだけではなかった。

次回、戦乱の世に響いた、ある父の“ひと言”が、ねこまんまの運命を決定づける――。